kaitoの日記

自分らしく行こう!

『82年生まれ、キム・ジヨン』に学ぶ、生きづらさの言語化の大切さ 

『82年生まれ、キム・ジヨン』という小説があります。韓国では100万部を超えるベストセラーになって、日本語訳もされました。男性社会の中で生きる女性たちの生きづらさを描写する小説です。


表紙もとっても印象的で、イラストで女性の顔が描かれているのですが、のっぺらぼうのような顔で、顔がないんですよね。寂しい風景が広がっていて、顔の形に切り取られている。ぽっかり心の中に穴が空いたような、生きている虚しさを感じさせるようなタイトル表紙です。

 

f:id:kaito87:20220306162416j:image


キム・ジヨンというのは、韓国の82年生まれの女性の中で、最も多い名前らしく、「これ、私のことかも」という期待で本をとった人も多かったんじゃないかな。


この本のあらすじをざっと説明すると


・結婚して子供をもうけ、主婦になったキム・ジヨンが、ある日、精神的な不調をきたすところから始まります。突然、霊が乗り移ったかのように、他人の言葉を喋り出す。ある日は死んだおばあちゃん、ある日は遠くにいるおばさんがキムジヨンの体を借りて喋り出す。でも本人は、そのことを覚えていない。


・夫に促されたキム・ジヨン精神科医にかかります。精神科医が、彼女の生い立ちを聴いていく。小学生のころ、中高生、大学、そして就職・結婚。聴いていくと、韓国人女性なら誰もが経験したことのある、でも当たり前すぎて問題になっていない、女性への差別・抑圧が浮かび上がってくる。


この本の読者は、キム・ジヨンといっしょに自分の昔〜今を追体験することになります。


・なんで男の人は許されて、女の人は許されないの?
・なんで被害にあったのは私なのに「お前が悪い」って言われるの?


多分、いろんな女性の人にインタビューして作ったんじゃないかな。
すげーよくできている。


この本が出るまでは
「生きづらさ」の原因は自分にあると考えている人が多かったはず。


努力が足りないから。
会社の上司との相性が悪いから。
生まれた場所がよくなかった。
パートナーとの問題を抱えている
自分が美しくないからだ。


こういうのは全部「生きづらさの原因を自分に求める考え方」です。


だから、この本を読んだ100万人の読者は


自分の今の生きづらさの原因と
10年前、20年前にスルーした違和感の正体とは
実はおんなじものだったの??


私の生きづらさって
生まれた時から始まっていたものだったの??


えー、うそ、まじ?、びっくり


「私の弱さが問題だと思ってたけど、実は違った」という驚きと救いをもたらした小説なんです。


たくさんの韓国人女性の「生きづらさ」をあなたの心の問題、から、みんなの問題、にシフトチェンジすることに成功しました。

 

★★★


読んでて思ったのは、生きづらさは「自分の内面」だけ見てもしょうがない、ということ。


伝わるように図に起こしてみたのですが、


意識できていることと、無意識に沈んでいるところがあって、意識できているだけに目を向けても生きづらさの根っこはわからない。


f:id:kaito87:20220306162737j:image


自分の「生きづらさ」の根っこを探るには、自分の内面ばかり見ても見つからない。逆説的ですが、他の人の「生きづらさ」に耳を貸さなきゃいけない。


つまり、生きづらさを言葉にするのは、共同作業だってこと。


f:id:kaito87:20220306162811j:image


当たり前ですが「生きづらさ」って人によって全然ちがうんですよね


だから「HSP」「繊細さん」「楽になる生き方」の中に克服のヒントはあるかもしれませんが、


本来は、私の気持ちを全部わかってくれる人なんて誰もいない。だから、自分の言葉でなんとか表現しなきゃいけない。


そのために外に目を向ける。他人の生きづらさに耳を貸したり、社会の成り立ちを理解する。


つまり、自己理解と他者理解の両輪が駆動しなきゃならないんだってこと。


f:id:kaito87:20220306162754j:image

 


★★★


いきづらさというのは、心の持ち方の問題だと思われがちで、生きづらいこの世をどう捉えて渡っていくかのメンタルガイドブックは、多数存在します。


でも、私は最近、この「結局は心の持ちようだよ」というアプローチは限界があると思っていて


メンタル本をいくら読んでも、なぜ僕が今苦しい思いをしているのか、について、答えてくれる本はないんですよね。


僕が知りたいのは「処方箋」じゃなくて「なぜ」なのに。


『82年生まれ、キム・ジヨン』では女性差別を描いております。男性であたしは「搾取する方」なので、共感できるところは多くなかったのですが不思議と、「これ、自分のこと書いてるんじゃないか?」と引っかかる本でした


ずーっと、この本が僕に与えたものを言葉に出来ずにいたのですが、「生きづらさを言葉にするのは、共同作業だ」という考えを得て


あ、なるほど、この本は、たくさんの人の生きづらさを社会の問題に変えてくれたことに価値があったのか

 

という気づきを得ました。


生きづらさって、内面の問題だけじゃなくて他人や社会にも問題があったりしますよね。

自分と社会ってつながっていますから、社会を理解することが、自分を理解できる

 

そういう気づきを与えてくれる、いい本だったんじゃないかな。

 

という、振り返りを

生きづらさを感じているKAITOからお届けしました。

それではまた。