ベテラン社員が若手社員を育成するとき
・自分はこういう環境で成長したのだから、お前もこういう経験をすべきだ
と無理難題を押し付け、結果として若手がしんどい目にあう、というのがある。
私はこれを鼻で笑っていた。
はいはい、生存バイアスね。私はこれを知っているから、そんなパワハラなことしない
と思っていたが、最近、これを地で行くことを自分がやってしまっていたことに気づいて、びっくりした。しかも実は組織的にそうなっていたことにも気づいた。
自覚する、というのは大変難しいものだ。
せっかくなので、なぜ無自覚なままだったのかの学びを書いておきたい。
生存バイアス的な育成プログラムが発動してしまう条件というのがある
それは、暗黙知領域がひろいゾーンで人を育てるときだ。
バイトのような形式知化されているところでは、こういった生存バイアス的育成プログラムは発生しない。
一方、言語化やマニュアル化が難しくて、経験によって学ぶ領域が広くなるほど、マインドやスタンスの話に問題が転換されやすくなる。
私の場合はまさにこれで、暗黙領域がとにかく広いゾーンで育成しようとしていた。
「けっきょくアイツのマインドの問題」と着地してしまっているときは要注意だ。生存バイアス的育成環境を強いていないか、問い直す必要がある。人の育成がなかなか進んでいないシーンなら、なおさら。領域に人を当てようとするのではなく、領域の切り取り方を見直す必要がある。
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で、これを自覚したとする。
その後にとれる選択肢はそこまで多くない。
- 暗黙知を形式知化することを頑張る
- 業務をチューニング・デザインして、その人の適性に合わせる
- 異動・転職させる
この3つだ。
このうち、暗黙知を形式知にしていくのは、けっこう難しい。推進者本人が「やれる」という感覚がなければ、避けた方がいい。
それよりも、若手社員の業務領域を見直して、より成果が出やすい形に寄せていく必要がある。支援やサポート体制をつくるのも、これに該当する。
もしこれもできなければ、いてもしんどいだけだから、異動や転職が濃厚な選択肢になってくる。
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結局、マインドやスタンス、熱量というのはコントロールできないのだ。
暗黙知の広い領域というのは、当人の熱量に左右される。
当人の熱量は、組織理解・同僚との関係性・それまでの成果によって変動する。
よって、周囲ができるのは、業務をデザインして成果がでる支援すること。それだけ。
そこから先の熱量の出し方やベクトルは本人による。
どう業務をデザインするか、どうサポートできるか。
これを考えよう。