「Will・Can・Must」という有名フレームワークがあります。あまりにも有名なので、一部の人はきっと「もうこれ以上聞きたくない、次同じ話をしたら離婚よ!」と言いたくなるでしょう。耳にタコとイカが出来ているかと思います。
最近、Will・Can・Mustはシンプルでありながら、奥深いフレームワークだなと気づいたことがあったので、書き残してみることにしました。
まずこの話は、Will・Can・Mustの3つの言葉の関係性は人によって異なる、という事実から出発します。同じWill・Can・Mustという言葉を使うと、フワッと上のようなベン図をイメージするでしょうが、円の重なり方は人それぞれです。
「関係性?重なり方?何のこと?」と疑問も持った方もいると思うので、
まずは私の妻のWill・Can・Mustを見てください。
その1、妻のWill・Can・Must
妻の仕事はサポートデスクです。営業がとってきた案件のお客様サポートのチームで、正社員として働いています。
仕事は定型化されていて、「やらなければいけないこと=Must」と「できること=Can」が、ちゃんと重なっています。仕事では自分の能力を十分に発揮できている、と言える状態です。もっと意欲を出せば、Canを広げてMustの重なりをさらに大きくしていくこともできそうです。
一方で、「やりたいこと=Will」と「できること=Can」の距離があまりにも遠く離れています。会社の外でも通用する実力が欲しいけど、自分が今持ち合わせているスキルと、外の社会で必要なスキルがあまりにも違いすぎて、最初のステップを踏み出せていません。
WillとCanが重ならない状態が続くのは問題です。解決するにはCanをWillに近づけるか、WillをCanに近づけるか、選択肢は2つしかありません。どちらの選択肢も今の妻には難しく、不満は残り続けるでしょう。
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以上。WillとCanが遠すぎるので、なんとかしたいよね、のパターン。一言であらわすと「仕事がつまらない」という状態です。
次は、1年前の私のWill・Can・Mustを見ていきます。
その2、一年前の私のWill・Can・Must
私はマーケティングの企画職の仕事をしています。1年前、新しい部署に異動。新規メディアの立ち上げの仕事をやりました。
「やるべきこと=Must」と「できること=Can」に距離があり、全く重なっていません。当時は、全く仕事がうまくいかない。やることなすこと失敗ばかりでした。MustとCanが重ならないのは大変辛い。Mustを動かせる力があればよかったのですが、そんな発想も余力もありませんでした。
「やりたいこと=Will」もハッキリしません。小さくバラバラに散ってしまって、どこに向かえばいいかわからない。身動きがとれず、完全に迷走していました。
MustとCanが重ならないのは、不幸です。解決するには、MustをCanに近づけるか、CanをMustに近づけるかの2択です。しかし、Mustが他人から設定されたものだと、そもそもMustを動かすことが不可能です。かといって、Canは簡単にも動かない。本来であればNoDeal、取引なしとするのが正しい姿なのですが、当時の私には難しかった。
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以上、MustとCanが遠いので、早くなんとかしようのパターン。一言であらわすと「仕事が辛い」の状態ですね。
最後に、元マイクロソフトCEOのビル・ゲイツのWill・Can・Mustの例を見ていきます。
その3、ビル・ゲイツのWill・Can・Must
ビル・ゲイツはマイクロソフトのCEOを退いた後、ゲイツ・メリンダ財団を設立。現在は、炭素ゼロ社会を実現し、地球温暖化を防止するための活動に専念しています。
広大な「やるべきこと=Must」の中に、WillとCanが包まれています。地球温暖化を防ぐという、大きなミッションの中で、ゲイツは自分の役割をテクノロジーでイノベーションを起こすことだとしています。政治には詳しくないが、テクノロジー分野ならITでもバイオでも貢献できる。
私や妻のWill・Can・Mustとの大きな違いは「Mustを最初に決めている」「Mustを自分の意志で決めている」点です。
ふつうはWillが先行します。野球選手になりたい、出世してお金持ちになりたい、老後はゆっくり過ごしたい、といったように個人的の幸せを追求するのは普通のことです。問題はWillとMustが重なりにくいこと。
一方ゲイツは、地球温暖化という超弩級の社会課題の解決を先に掲げます。地球温暖化ですから、Mustも広大です。Canの大きさは全然足りません。一方、WillとCanは綺麗に内包されています。やりたいことをやれている。そして、Willの方がCanよりも大きいですから、もっとCanを大きくしていくぞ、とモチベーションも湧きやすい。働き方の理想といってもいいんじゃないでしょうか。
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という感じで、妻・私・ビルゲイツ三者三様のWill・Can・Mustを眺めてみました。ブログの冒頭で書いた、Will・Can・Mustの3つの言葉の関係性は人によって異なる、という意味が、わかりやすくなったと思います。
ゲイツのWill・Can・Mustは、さすがに本人に聞いた訳じゃないので私の想像ですが、本や動画でゲイツ自身が発信している内容からすると、大きく外している訳ではなさそうです。
では最後にまとめとして、3人のWill・Can・Mustから何が学べるのかを説明して終わりにしようかと思います。
幸せに働くためのWill・Can・Must
Mustは自分の意志で設定できる
Mustを自分の意志で設定する。Mustは自分で設定できる。幸せに働くためには、まずここから出発する必要がありそうです。
「Must=やらなければならないこと」なので、普通はコントロールできないものだと考えます。上司からの依頼だから断れない、顧客からのクレームだから、やらねばならぬ。Mustがどんどん膨らんで、CanやWillと距離ができてしまう。その結果、仕事がしんどい、仕事がつらい、となってしまう。
Mustは断れないしコントロールできないものと考えている以上、いつまでたってもWillと重ならないし、Canも広がらない。どうしたものか。いや、そうじゃない。どうやら、「断れないしコントロールできない」というものの見方に問題があるんじゃないか。
Mustが他人から与えられたものだと、どうしても断れないしコントロールできないものになってしまう。では、ゲイツのようにMustを選んで自分で設定するべきなんじゃないか。そうすれば、最初からWillとMustの重なりが生まれます。
WillとMustは全くの別ものと考える方もいると思いますが、「WillをつかってMustを選ぶ」「Willの中にMustを見出す」という考え方の方がいいんじゃないか。
円の重なりを少しずつ大きくする努力をしよう
WillとCanが重ならない、MustとCanが重ならない辛みは、私や妻のWill・Can・Mustの図をもう一度見ていただくとよくわかります。WillとCanとMustがちゃんと重なること。3つが重なる領域を大きくしていくこと。円が重なるところにしか、価値は生まれません。ここでいう「価値」とはお金のことだけではなく、働く喜び、与える喜びといった感情報酬も含まれます。
私たちは、3つの円の重なりが少しでも大きくなるように、Mustを選んだり、Willの見方を変えてみたり、Canを大きくしてやれることを増やしていくことが必要です。特にMustを選ぶには、自分の主体性を信じて、人生をコントロールするリーダーシップが必要不可欠です。一気にやることはできませんから、少しずつ、周りの人間関係を解決していく、自分にとって気持ちいい働き方を追求していくことから始めるのがいいでしょう。
いずれにしても「長時間がんばって働く」とか「他人に嫌われない」といった努力は報われないことが多いですが、「3つの円の重なりを大きくしていくこと」を意識して努力できると、少しずつ人生が楽しくなっていきます。
以上です、
あ、そうだ。ビル・ゲイツの気候変動の本おもしろかったです。
ぜひ読んでみてね〜
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このブログは、細谷功さんと佐渡島さんの本から着想を得ました。